シーケー金属の技術開発、製品開発は、挑戦する精神から始まります。
しかし、思うように進まないのも開発の一面です。
試行錯誤や協力関係、そして諦めないねばり強さ。
新しい製品や事業が生まれるまでのストーリーを紹介します。

フレアマシン開発に実を結んだ連携
独立した事業部を立ち上げるまでに

 フレアマシン。
 今回の取材先、シーケー金属のパンフレットには、“Flare-Machine”と英文で表記されている。フレア(Flare)は一般的には、太陽の爆発現象のひとつ(太陽フレア)。航空機が赤外線誘導ミサイルの追尾・命中を回避するために空中に放出する、マグネシウムなどの金属の高温発熱体(兵器フレア)。裾が広がったスカート(フレアスカート)、等々で用いられるが、いずれにも“本体のまわりに広がる”という意味合いがあるようだ。同社が産学官連携で開発したフレアマシンにも、“端を広げる”機能があるため、そのネーミングに際してはこれらが念頭にあったのではないかと思われる次第だ。
 ではいったい、何の端を広げるのか。同社の主な業務のひとつは配管継ぎ手の製造であるから、その関連部材を広げるのでは…と想像できるが、答えは鋼管そのものだ。

もうひとつ売り上げの柱を…

フレア加工された鋼管(上)と施工例。接合部のパッキンは 管内を流れるものの性質によって換えられる。

フレア加工された鋼管(上)と施工例。接合部のパッキンは管内を流れるものの性質によって換えられる。

 鋼管をつないで長い流路をつくる場合、以前は溶接によって接合してきた。しかし昨今では、工事現場のニーズにより、鋼管の両端を帽子のツバのように90度L字型に広げ、パッキンを介してルーズフランジをボルトとナットで締めつけて止水する工法がとられつつあるようだ。
工法が変わった主な理由のひとつに、確かな溶接技術をもつ熟練工が減ってきたことがある。それゆえ現場での溶接をなくし、工場でのフランジ溶接やプレハブ加工を行うことで作業を集約させ、現場施工にかかる時間の短縮や品質の向上に繋げようという。溶接は、手間がかかりすぎて敬遠されていたのである。

 また工事現場にある“火なし化”のニーズも、現場での溶接工法を排除する方向に働いたようだ。工事現場で火を使った場合、作業終了後、最低でも1時間以上は安全確認のために現場に残らなければならない。午後5時に終業して現場を離れるためには、4時前には溶接作業を終了しなければならず、作業効率の悪い溶接は以前より工法の改善を求められていたのである。

 これらのニーズに応えようと、シーケー金属では富山県工業技術センターと連携して新たな工法の研究に着手。後に「フレアマシン」と名づけられる、鋼管のツバ出し成形加工機の開発に乗り出したのであった。

 「建設市場が右肩下がりの状況では、当然、継ぎ手の需要も右肩下がりになります。そこで当社では、継ぎ手以外に、売り上げの柱になる商品を模索し始めました。フレア工法はその最中に発案され、鋼管のツバ出し成形加工機の開発へとコマが進められたのです」
同社で技術部門の責任者(部門長)を務める大橋一善氏が資料を繙(ひもと)きながら平成10年頃を振り返った。

 同社と富山県工業技術センターは目と鼻の先の距離にある。地の利を生かし、「相談したいことがあるけど、今から行っていい?」「どうぞ」のような電話を頻繁に交わし、鋼管の端を座屈(ざくつ)させることなく、きれいにL字型(つまり90度)に曲げる、ツバ出し成形加工機を開発。フレアマシン200型(小型機)は直径80~200mmの鋼管・ステンレス管の加工を専用とし、同400型(大型機)は直径200~400mmの鋼管・ステンレス管のツバ出しに向いたものだった。

後発に追われ、追いつかれたが…

「このフレアマシンは、工業技術センター、富山大学(高岡キャンパス)との連携の産物」と強調する大橋氏。

「このフレアマシンは、工業技術センター、富山大学(高岡キャンパス)との連携の産物」と強調する大橋氏。

 フレアマシンは、タッチパネルによる簡単な操作と高品質・高精度なツバ出しが可能であったため、建設関係者の間で耳目を集めた。何しろ直径400mmの鋼管の溶接には、熟練工でも最低1時間程度の時間を要するが、このフレアマシンでは鋼管1端のツバ出しの加工時間は1分程度。誰が加工してもツバの部分は均質になり、接合部にパッキンを使うため漏れ出す心配もなく、レントゲン検査は不要だった。溶接に比べて作業効率は格段に跳ね上がったわけだ。

 こうしてシーケー金属が開発したフレアマシンが注目されると、2匹目、3匹目のドジョウを狙って、いくつものメーカーが参入。日本国内では、同社を含め、主だった企業は4社を数え、シノギを削るようになってきた。シーケー金属は、開発が先行したため当初は有利に展開していた。ところがそのうち、後発のX 社の後塵を拝するようになってしまったのだ。
 なぜか…。

 加工の品質はほぼ同等であったが、X社のマシンはシーケー金属のマシンに比べてコンパクトで軽く(X社/L1450×H1420×W980mm、1.9t。シーケー金属/L1800×H1600×W 1000mm、2.3t)、金型の交換が手でできるという使いやすさがあった(シーケー金属のマシンの金型交換はクレーンを使う)。

 また販売価格もシーケー金属では1台千数百万円(小型)に設定したが、X社は販売ではなく、その半額程度の使用契約料と1加工ごとに加工料(数百円)を支払う形にして、中小の工事店でも手が届く利用制度にしたのだった。そのため、後発ながらも急速にシェアをのばすようになったわけだ。

 そこでシーケー金属では、より小型で軽いマシンの開発を企画。当機構の「企業ニーズ対応型産学官共同研究事業」(平成20年度)の採択を受け、富山県工業技術センター、富山大学の協力も得て、新たなフレアマシンの開発に乗り出したのである。

小型化と加工品質をUP

来機のフレアマシンII(左)と新型のフレアマシンIII。IIIからは外観デザインにも配慮し始めた。

来機のフレアマシンII(左)と新型のフレアマシンIII。
IIIからは外観デザインにも配慮し始めた。

 「自社単独では、研究事業に採択される2年ほど前から取り組んでいたのですが、フレア加工の際の適正な温度、加工した後の金属の組織的な特性などについては自社単独では手に負えない部分もあり、協力をお願いした次第です」と大橋部門長は共同研究に乗り出した経緯を振り返った。

 少し敷延(ふえん)しよう。メッキが施された鋼管では、常温でフレア加工していくとメッキが剥がれるという問題が起きていた。まだらにメッキが剥がれたのでは、フレア面に隙間が生じ、パッキンをするといっても漏れる可能性が出てくる。そのため加工前に加工部分のメッキを剥がしていたのだが、実験を繰り返しているうちに加工時に加温するとメッキが剥がれないことが判明してきた。

 またステンレス管を常温でフレア加工すると、マルテンサイト変態により、金属の組成が変化して磁石につく性質を持ってしまうのだが、摩擦を利用してステンレス管を引っ張り上げるように加工軸を動かすと組成の変化が起こらず、加工硬化も防ぐことができるとわかりつつあった。共同研究では、加工時の「メッキが剥がれない」「ステンレスが加工硬化しない」など各々の目的に合った最適加温の温度や加工軸の角度の取り方、加工の際の支点の取り方を明らかにすることを主眼に検証が進められたのである。

 小型軽量化にあたっては、マシンの無駄なスペースをすべて洗い出し、部品一つひとつの軽量化にも着手。加工時にかかる圧力の構造計算とその分散の仕方も改善し、L1450×H1420×W980mmのフレアマシン(企)(200型、400型)ができ上がった。

製造・アレンジを内製化

フレアマシンIIIの加工部。中央上部に加工のための軸があるが、従来機では2本の軸で加工していたが、軽量・コンパクト化を図って1本に。1本の加工軸でも座屈しないようにして特許を取得した。

フレアマシンIIIの加工部。中央上部に加工のための軸があるが、従来機では2本の軸で加工していたが、軽量・コンパクト化を図って1本に。1本の加工軸でも座屈しないようにして特許を取得した。

 製造方法にも改善が試みられた。従来機では、設計・性能評価は自社内で行っていたものの、実際の製造・組立は外注していた。社内に技術が蓄積されないため工事現場ごとのアレンジができず、またマシンのバージョンアップの要求にも応えられないという問題が起きていた。そこで新型機では、部品の製造やベースになる部分の組立ては外注するにしても、最終的な組立てや制御部の取付け、マシン全体の調整は社内で行うことにしたのであった。

 「マシンの性能としては、平成20年度中に目標を達成していました。しかし今回は、商品として売ることを強く意識して、マシン外観のデザインなどにもこだわり、本格的に販売を始めたのは22年度に入ってからです。一部外注はあるものの、製造から販売までを一貫していますので、“事業部として独立させた方が動きやすい”との経営判断により、フレア配管事業部が立ち上げられました。今のところ順調に販売しているようです」(大橋氏)

 従来機のマシンの売れ行きは、年に数台という状況であった。ところが改良型フレアマシンIII(200型、400型)を本格的に売り出すと、軽量小型で安価、フレア面の品質も安定しているところから毎月1~2台が売れるようになった次第。ヒット商品に育ちつつあるところだ。
フレアマシンIIIは、金の卵を産む親鳥へと成長しつつある、といっても過言ではないだろう。

 

掲載元:富山県新世紀産業機構 TONIO Web情報マガジンより